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ビクトリア・ハーバーを中心にますます盛り上がりを見せる香港アート、アートバーゼル香港2024開幕直前!

Art Basel Hong Kong 2023 Nanzuka Courtesy Art Basel
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アートイベントといえば必ず名前が上がるアジア屈指のアートバーゼル香港。2024年3月28日から30日の3日間にわたり香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催される。世界の名立たるメガギャラリーのほか、初参加となる画廊も数多く集まる今年の香港には、40か国の地域から242の出展者が並び、コロナ禍以前と同規模での開催となる。展示エリアは8つに分かれており、約200もの画廊が参加するメインセクション「ギャラリーズ」では今年、デジタルアートやテキスタイルアートが注目されている。ほかにも、将来を嘱望されたアーティストを個展形式で紹介する「ディスカバリー」、アジアのアーティスト紹介に特化した「インサイト」などがあり、それぞれ見応えのある内容となっている。M+との共同コミッション(提供:UBS)として、ヤン・フードンが制作した《Sparrow on the Sea》は3月22日からM+のファサードに投影される。それでは、それぞれの見どころを紹介していこう。

エンカウンターズ・プログラムでは、アートスペース・シドニーのエグゼクティブディレクター、アレクシー・グラス・カントワーがキュレーションを担当し、「わたしは出会ったものすべての一部である」をテーマに、幅広い地域のアーティストによる16の大規模プロジェクトを発表します。そのうち11点が本フェアのために作られる新作で、2013年のプログラム開始以来、これほど多くの新作が実現するのは初めてのことです。注目の作品をご紹介します。

● 韓国人アーティスト、ヤン・ヘギュによる《Contingent Spheres》 2020年、2022年)は、フィリピンの伝統的な織物に使われるモチーフであるビナコルと、1960年代のオプアートという視覚的コードを融合させた2体のラタン製人型彫刻からなる作品である。本作品は、クッチェ・ギャラリー(ソウル、釜山)、クリマンズット(メキシコシティ、ニューヨーク)、ギャルリ・シャンタル・カルーセル(パリ)より展示される。
● 香港を拠点とするアーティスト、Mak2による《Copy of Copy of Copy of Copy》( 2024年)は、2024年度のアートバーゼル香港のために制作された、力強さと遊び心を併せ持つインスタレーション作品です。ドゥ・サー(香港)から発表される本作は、2つのフェアブースを上下につなげたもので、複製や進化、シミュレーションといった概念を探究する。
● オーストラリア人アーティスト、ナミナプ・メイムル・ホワイトによる《Larrakitj Forest》(2024年)は、本フェアのために制作されたインスタレーション作品だ。オーストラリア北部に暮らすヨルング族に属するホワイトは、ヨルング族の葬儀や宇宙観、絵画的伝統を参照し、長方形の器を複数用いて本作を制作しました。本作は、サリヴァン+ストランプフ(シドニー、メルボルン)より発表される。
● インド人アーティスト、ジティシュ・カラットによる《Wind Study (Hilbert Curve) 》( 2022ー2023 年)は、火、風、煙、インクを用いて制作された複雑かつ大規模なドローイングのシリーズで、数学者ダフィット・ヒルベルトが1891年に定式化した空間を埋め尽くす連続的でフラクタルな空間充填曲線を参照している。本フェアで初披露となる本作は、テンプロン(パリ、ブリュッセル、ニューヨーク)から発表される。
● シンガポール人アーティスト、ミン・ウォンによる《Friendship First》( 2024年)は、エンカウンターズ部門のために制作された彫刻インスタレーション作品だ。2つの半球体で構成される本作は、1970年代以降、米中の外交手段として利用されてきた卓球にまつわるアーカイブ映像を半球体の表面に投影したもので、作家の米中関係への関心を例示。本作はオオタファインアーツ(上海、シンガポール、東京)からの発表。

さらに、シドニー在住のアボリジナルのアーティスト、ダニエル・ボイドによるプロジェクトが、エンカウンターズ・プログラムの会場から離れた香港のパシフィックプレイスにて展示される。ボイドの作品は、視覚的かつ概念的な要素として点描を用い、アイデンティティや記憶、知覚や歴史といったテーマを探究する。本プロジェクトはクッチェ・ギャラリーおよびステーション(メルボルン、シドニー)からの出品で、エンカウンターズ作品の別会場での展示をサポートする公式パートナーであるスワイヤ・プロパティーズが支援している。

全参加アーティストおよびギャラリーのリストは artbasel.com/hong-kong/encounters を参照。

過去最多の33ギャラリーが参加するキャビネット・プログラムは、ギャラリーのメインブース内でテーマ性のある展示を行う企画で、アジア太平洋地域のアーティストを単独で紹介していくことに力を入れている。見どころは以下の通り。

千高原藝術空間(成都)は中国人アーティスト、ビ・ロンロンによるインスタレーション作品を発表します。本作は、異なる都市や文化のパターン、インターネット、個人的な記憶、アーティストを取り巻く環境の相互作用に深く迫る。
チョヒョン画廊(釜山)は、韓国の巨匠、故パク・ソボが近年手がけた絵画のシリーズを展示する。パクの作品を特徴づける非凡な物質性やリズム、技法を見て取ることができるシリーズだ。
ヘラルド・ストリート(ロンドン)は、ロンドンを拠点に活動する香港出身のアーティスト、キャリー・コックのアクリル・インク絵画を展示。本ブースでは、コックのクィアな交流や家庭生活、アートの歴史に対する映画的な探究に光を当てる。
ヤーヴァズ・ギャラリー(シンガポール、シドニー)では、タイを代表するアーティスト、ピナリー・サンピタックの新作を展示する。サンピタックは有機的な構造や素材、聖と俗の二面性について長年探究を続けており、今回の作品でもその探究が伺える。
ジェシカ・シルバーマン(サンフランシスコ)は性や生殖、霊性を探究するアメリカ人アーティスト、ロイ・ホロウェルの絵画シリーズを紹介。
アネリー・ジュダ・ファインアート(ロンドン)では、ロシアの前衛芸術家であるカジミール・マレーヴィチが1913年から1920年代初頭にかけて制作した紙のドローイング作品や、アレクサンドル・ロトチェンコ、アレクサンドラ・エクステル、ナウム・ガボ、エレナ・セメノワ、グスタフ・クルーツィスなど、無対象芸術に大きく寄与したアーティストの作品を展示。

全参加アーティストおよびギャラリーのリストは artbasel.com/hong-kong/kabinett を参照。

マルチメディアアーティストであり、映画プロデューサーでもあるリー・ゼンフォアがキュレーションするフィルム・プログラムでは、文化をテーマにした動画チャンネル「ナウネス」や、ビデオアートを専門とする香港有数の非営利団体「ビデオテージ」とのコラボレーション作品など、刺激的な10 作品が上映。本プログラムは3月27日から30日まで、HKCECで開催されます。見どころは以下の通り。

● 中国の映画監督チュウ・ジョンジョン《A New Old Play》( 2021年)は、20世紀中国における激動の歴史を背景に、著名な道化師が自分の人生を回想する物語です。本作はスター・ギャラリー(北京)から発表。
● ドイツ人アーティスト、アンネ・イムホフ初の映像作品《Sex》( 2021年)は、2019年3月にテート・モダンで発表された同タイトルのパフォーマンス作品の最初の章で撮られた記録映像で構成される作品です。イムホフ独自のダークな視覚言語が特徴的な本作は、スプルース・メイガース(ベルリン、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク)より発表。
● 香港のアーティスト、ウォン・ピンが自身の個人的なエピソードや日記をもとに制作したシングルチャンネルアニメーション《Sorry for the Late Reply》( 2021年)は、香港の住民が抱く願望や不安を掘り下げます。馬凌画廊(香港)からの発表。
● 韓国人アーティスト、キムスージャ《Thread Routes – Chapter IV》( 2014年)は16ミリフィルムの作品で、キムスージャが作品制作に用いることで知られるテキスタイルと、パフォーマンスや建築など他の媒体や分野との関係性を考察します。本作はアクセル・ヴェルヴォールト・ギャラリー(香港、アントワープ)から発表。
● スウェーデン人アーティスト、アンナ・ウッデンベルグによる映像作品《Useless Sacrifice》( 2022-2023 年)は、身体文化、精神性、社会階級、嗜好、新しいテクノロジーが自己表現に及ぼす影響など、ウッデンベルグの作品におけるテーマを探究した作品です。クラウパ・タスカニー・ザイドラー(ベルリン)より発表。

フィルム部門は一般無料公開される。全参加アーティストおよびギャラリーは近日中にウェブサイトで発表する。

ライター、編集者であり、アートバーゼルのアジアコンテンツアドバイザー兼アジア担当編集者であるステファニー・ベイリーがキュレーションを担当し、3月27日から3月30日までHKCECのホールで開催されるカンバセーションズ部門は、文化芸術界の重要人物による精力的な対話の場を参加者に提供する。本部門には、15以上の国や地域から11人のパネリストとスピーカーが参加。見どころは以下の通り。

ヘイワード・ギャラリー(ロンドン)での個展を控えたヤン・ヘギュと観客の対話。キュレーターのヤン・マが司会を務める。
● 伝説的な日本人アーティスト大竹伸朗村上隆による、変貌する東京と自身の関係をテーマにしたディスカッション。アートウィーク東京との共催となる。
● 大館のアート部門責任者であるパイ・リーが司会を務めるパネルディスカッション。ウリ・シッグをはじめとするコレクターたちが、時代を象徴する中国現代アートのコレクションをどのように形成しているか、そのアプローチを紹介。
ツアイツ・アフリカ現代美術館のチーフキュレーター兼エグゼクティブディレクターのコヨ・クオ、M+ディレクターのスハンニャ・ラッフェル、ドゥルジョイ・バングラデシュ財団の創設者であるドゥルジョイ・ラーマンを迎えた、21世紀における文化施設の脱植民地化についてのラウンドテーブル。
● アーティスト兼ミームメーカーのfreeze_magazineことセム・Aが考案した文脈依存型パフォーマンス「Crit Club」の特別なライブ収録版。カラ・チン、ジティッシュ・カラット、ステフ・ホアンなどのアーティストを招き、「 アーティストと作品のどちらが大切か」という答えの出ないテーマについて議論する。

さらに、今年は上海、広州、香港の3箇所の別会場で開催されるカンバセーションズ・プログラムが追加された。

● 2024年1月8日に開催されたUBSグレーターチャイナカンファレンスでは、アートバーゼル香港のディレクター、アンジェル・シヤン=ルーの進行により、アーティストのルー・ヤン、ワン・ジークアン、ギャラリストのサイモン・ワン、TRラボのアジアリーダーであるシルビア・ワンを招いて、中国のデジタルアート市場について深く考察するディスカッションを行った。
● アートバーゼルと香港政府観光局が広州で共催する2024年2月27日の対談では、グレーターベイエリアにおけるアートのエコシステムの進化について探ります。M+シッグコレクションのキュレーター、ウー・モー博士の司会で、リブレリア・ボルヘス(広州)の創設者でありアーティストのチェン・トン、広東美術館のディレクターのワン・シャオチャン、和美術館のエグゼクティブディレクターのシャオ・シュウ、香格納画廊所属のアーティストであり、広州画廊のディレクター兼共同創設者であるリン・アオジエが参加。
● 2024年2月29日には、香港にてアジア・アート・アーカイブがディスカッションを主催し、新進気鋭のアーティストやキュレーターがトゥモローメイビーニューパークといったオルタナティブサイトや、香港のアートを促進する枠組みを生み出す取り組みについて話し合う。司会はカレント・プランズの創設者、ユニス・ツァンが務める。

カンバセーションズ部門のオンサイトプログラムは、一般の方も自由にご参加可能。同部門のプログラムの全容については、近日中にウェブサイトで発表。

アートバーゼルはHKCECにとどまらず、M+と3年連続でコラボレーションを行い、同館の象徴的なファサードを活用するなど、香港全域にわたってアート活動を展開している。アート・バーゼルとM+の共同委託によりUBSが開催する今年の展覧会では、アーティストであり映像作家でもある楊福東(ヤン・フードン)によるサイトスペシフィックな新作「Sparrow on the Sea」が展示される。香港にてモノクロフィルムで撮影された本作では、海辺の村や夜の街並みのシーンが交錯。ヤンは、1970年代から90年代の香港名作映画における視覚的なモチーフや質感を参照し、郷愁と親しみを想起させることを目指します。M+のファサードにて上映される本作に音声はないが、その観賞体験は無音とはほど遠く、ヤンに言わせればそれは、それぞれの鑑賞者が周囲の独特な音響風景を取り入れながら観賞することを促す。また、本作品は香港の過去と現在の断片を織り交ぜ、予測不可能な未来を予感させる短詩として機能するように意図されている。

音声付きのバージョンはM+シネマで上映され、上映後はヤン本人が登壇するトークも開催予定。本イベントはアートバーゼルとM+の共催となる。参加をご希望の方はこちらからご登録。

アートバーゼルは、1aスペース、アジア・アート・アーカイブ、アジアン・カルチュラル・カウンシル、香港アートセンター、香港アートギャラリー協会、CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)、パラサイト、WMAなど、香港を拠点とする非営利団体への特別ブースの提供を継続している。香港大学美術博物館、香港浸会大学視覚芸術院、香港中文大学文物館などの地元の大学にも支援を拡大する方針だ。短時間の実験的なプレゼンテーションの場である「エクスチェンジサークル」は、今回のパブリックプログラムにも含まれる予定である。

2024 年のアートバーゼル香港開催中は、香港を代表する美術館や文化施設にて、豊かで活気あふれるプログラムや展覧会もご覧いただける。主な参加施設とプログラムは以下の通り。

・アジア・アート・アーカイブ
「Another Day in Hong Kong」
・CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)
「Factory of Tomorrow」
・香港浸会大学
「Subversion with Tradition: Remaking Gender in Ink Art with PENG Wei + AVA alumni」
・香港アートギャラリー協会(ギャラリーパートナーとの共催)
→香港アートギャラリー協会は、香港の活気あるギャラリーシーンへの訪問を奨励し、以下の日程でのオープニングやツアーを含む特別イベントを計画しています。
 セントラル・ウエスト香港(上環):3月21日(木)
 サウスサイド・サタデー(南区):3月23日(土)
 セントラル・ギャラリーズ・デー(中環): 3月25日(月)
・M+
「Apichatpong Weerasethakul: Primitive」
「Shanshui: Echoes and Signals」 
・M+とル・フレンチ・メイの共同開催
「Noir & Blanc: A Story of Photography」
・大館
「The Monk from Tang Dynasty – Tsai Ming-liang」
「Green Snake: women-centred ecologie」
「 Who is Who」
・K11 アート・ファンデーション
「Boundless Reverie: Chinese Savoir-Faire and Contemporary Art」

アートバーゼル香港2024
期間:2024年3月28日(木)〜30日(土)
会場:香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター
住所:1 Expo Drive, Wanchai, Hong Kong
一般公開時間:3月28日(木)午後2時~午後8時
          :3月29日(金)午後2時~午後8時
         :3月30日(土)午後1時~午後7時
https://www.artbasel.com/hong-kong

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